がんばっているのに、成果がちっとも見えない。まわりは前に進んでいるのに、自分だけ止まっている気がする。そんな焦り、あるよね。
こんにちは、クォッカです🐸
もし今、そんなふうに焦ってるなら、土を掘り返してばかりいた、一匹の子アナグマの話を聞いてほしいんだ。
結論から言うね。
いちばん大事なことは、たいてい、目に見えない静かなところで進んでる。芽が出ないその時間は、サボりじゃなくて、根を張ってる最中なんだ。
掘り返す子アナグマと、見えない根

子アナグマが、土を掘り返しては、また埋めて、をなんども繰り返していた。すぐそばでは、あとから芽を出した草が、もうすくすくと背をのばしている。
「おかしいなあ。ぼくのほうが先に竹の種をうえたのに、ぜんぜん芽が出ない。となりの草は、もうこんなに大きいのに」
「……もしかして、失敗しちゃったのかな?」
クォッカが、土をそっとおさえて、子アナグマの手を止めた。
「待って、掘り返さないで。この竹はね、今、いちばん大事な仕事をしてる真っ最中なんだ。地面の下で、根っこを、うんと広げてるところだよ」
「根っこ? でも、上には何も見えないよ」
「うん、見えない。でもね、“見えない”のと”止まってる”のは、ぜんぜん違うんだよ。」
一斎は「すごいことは、静かな場所で起きる」と言った
二百年前の佐藤一斎が、こんな言葉を残してるんだ。静かに自然のいとなみを観察してみると、その大きな働きは、みんな「目立たない、静かなところ」で行われている、って。
【原文】静に造化の跡を観るに、皆其の事無き所に行わる
【よみがな】しずかにぞうかのあとをみるに、みなそのことなきところにおこなわる
【意味】自然のいとなみを静かに観察してみると、その偉大な働きはすべて、力むことも騒ぐこともない、静かなところで行われている。
花が咲くのも、木が育つのも、朝がくるのも、どれも音を立てて「今がんばってます!」ってアピールはしないよね。夜のあいだに、土の中で、こっそり進んでいる。子アナグマの竹の根っこと、まったく同じだ。いちばん大事な働きは、たいてい、目に見えないところで静かに起きてるんだ。
竹が一日で一メートル伸びる、その裏側
竹の話を、もう少しくわしく。竹は、地上に姿を見せる前に、地面の下で「地下茎」という根っこのネットワークを、うんと広げていくんだ。この地下茎は、1年で何メートルも伸びることもある。そこに、たっぷりエネルギーをためこんでいく。
そして、時が来ると。タケノコが地上に顔を出したあとの伸びかたが、すごいんだ。林野庁の記録によると、モウソウチクは1日で119センチ、マダケは121センチ伸びたことがあるという。1日で、きみの背より高くなる計算だよ。
でもね、その「1日で1メートル」を支えているのは、地上に何も見えなかったあいだの、地下の準備なんだ。根を広げずに、いきなりドンとは伸びられない。静かな時間は、サボりじゃない。あとで一気に伸びるための、仕込みの時間なんだよ。
変化は「線」じゃなく「段」でやってくる
ここで、知っておいてほしい”変化の形”がある。
ぼくらはつい、努力した分だけ、成果もまっすぐ右肩上がりに増えていく、と思いこんでる。だから「10やったのに、10ぶんの成果が出ない」と焦る。でも、ほんとうの変化は、まっすぐの線じゃないことが多いんだ。
しばらく「平ら」に見える時期が続いて、ある日とつぜん「段」をひとつ上がる。竹が、長い地下の時間のあとで一気に伸びるのと、同じだね。楽器も、勉強も、体づくりも、たいていこの形をしてる。
だから、いちばんもったいないのは、平らに見える時期に「これ、効いてないんじゃ」と思ってやめてしまうこと。その平らな時期こそ、じつは根を張ってる真っ最中なんだから。
「いつまで待てばいいの?」と不安なきみへ
とはいえ、こう思うよね。「じゃあ、いつまで待てばいいの?」「永遠に芽が出なかったら、ただの言い訳じゃない?」って。もっともな不安だよ。だから、大事な切り分けを2つ、渡すね。
ひとつめ。「静かに待つ」は、「何もしないでボーッと待つ」とは、まるで違うんだ。竹の根だって、水と日ざしがなければ育たない。目に見える成果は出なくても、水をやる手、つまり日々の小さな行動は、動かし続ける。ここが、育つ人と、ただ止まる人の分かれ道だよ。
ふたつめ。焦ってくると、毎日、土を掘り返して根っこを確認したくなる。でもそれ、じつは根を傷つけちゃうんだ。結果を毎日はかって、出た出ないで一喜一憂して、心をすり減らす。それが”掘り返し”だよ。見えないのは不安だけど、見えないまま水をやり続けられる人が、いちばん強い。
芽じゃなく、「水やり」を数えてみて
じゃあ、具体的にどうするか。焦りの正体は、たいてい「結果(芽)ばかりを見てること」なんだ。芽は、自分ではコントロールできない。いつ出るかは、竹が決めることだからね。
だから、数えるものを変えてみて。見るのは「今日、水をやれたか」。つまり、結果じゃなく、自分がやった小さな行動のほうを、カレンダーに◯していくんだ。1ページ書けたら◯、10分歩けたら◯、それでいい。芽が出たかどうかは、今日は気にしない。
一歩先の話をするね。この「◯を数える」を続けると、面白いことが起きる。焦りが、静かな自信に変わっていくんだ。「まだ芽は出てない。でも、水は毎日やれてる。なら、根はきっと伸びてる」。そう自分を信じられるようになる。それはもう、竹が地下で力をためてるのと、同じ状態だよ。
よくある質問
Q. どれくらい続ければ、成果って出るの?
A. 正直に言うね。竹に「あと何日で伸びます」がないみたいに、決まった日数はないんだ。でも一つだけ言えるのは、「水やりの◯」がたまるほど、根は確実に広がってるってこと。時期は選べないけど、備えはできる。
Q. まわりはどんどん成果を出してる。自分だけ遅い気がする。
A. それ、となりですぐ伸びた草を見て焦る子アナグマと、同じだよ。早く伸びる草もあれば、じっくり根を張る竹もある。伸びる速さと、伸びたあとの高さは、別ものなんだ。きみの種類の、きみのペースがあるよ。
Q. がんばってるのに全然だと、心が折れそう。
A. そういう時は、いったん芽から目を離していい。結果を見つめすぎると、だれだってしんどくなるものだから。もし気持ちの重さが長く続くようなら、信頼できる人や専門家に話してみるのも、ひとつの手だよ。
Q. 途中で「やり方が間違ってる」場合もあるよね?
A. いい問いだね。そこも切り分けよう。ずっと平らで不安なら、”水のやり方”、つまり方法を見直すのはあり。でも「芽が出ないから」と根そのものを掘り返す、つまり積み上げをゼロに戻すのは別。方法は調整していい、土台は守る、だよ。
関連して読みたい記事
「まだできない」は「これからできる」の途中なんだ、という話(#4)。見えない根の話と、地続きだよ。
それから、時間との付き合い方の話(#7)。焦りがつのる夜に、あわせて読んでみて。
おわりに
子アナグマの竹は、あのあとも、しばらく静かなままだった。でも土の下では、根が、しずかに、確実に広がっていた。そしてある春、だれよりも高く、まっすぐ空へのびていったんだ。
きみの毎日も、きっと同じだよ。今、目に見えなくても、いちばん大事なことは、静かなところでちゃんと進んでる。掘り返さずに、今日の水を、そっとやろうね。🐸🌱
出典:佐藤一斎『言志四録』より









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